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第30回: 日本外交のパワーダウンを憂う
                       
2008.10.14 過去掲載分

 アメリカがついに北朝鮮に対してテロ支援国指定を解除した。ブッシュ大統領が解除方針を議会に通告したのは6月。発効するのは8月11日だったが、これを2カ月遅らせるという「配慮」は示したものの、解除方針は最初から決まっていたということだろう。

 日本外交はまたしてもそのパワーを示せなかった。北朝鮮の金正日総書記は核施設の稼動や核実験の再開をちらつかせたりしてアメリカを揺さぶった。これが最終的に「勝った」ことになる。

 アメリカをはじめ国際社会にとっては、北朝鮮の「核・ミサイル」がこの地域の安定と平和をおびやかす最大の問題なのであって、「暴発」を防げれば、それでいい。日本の場合は、「拉致」という揺るがせにはできない問題を抱えている。

 ブッシュ大統領以下、「拉致」問題には同情や配慮を見せるかたちをとってはきたが、結局は、「拉致問題は日朝間で決着を」として退けたことにほかならない。北朝鮮は「再調査」の約束をしながら、その後、なんら誠意ある態度を示していない。日本は完璧に「コケにされた」ことになる。

 こういうとき、実にもの分かりのいい態度を取るのが日本の常である。およそ、独立国家である以上、「国益」を踏まえ、主張すべきは主張するという確固とした態度を貫かなければ、国際社会で相手にされる存在にはなり得ない。

 だから、テロ支援国指定解除に対しては、アメリカに徹底して抗議し、日本独自の経済制裁は一段と強化するという手を打つ必要がある。だが、そういう方向にはなっていない。

 外交というのは、それぞれの国家が国益を最大限に担保するために動くものである。アメリカにとってはブッシュ政権の最後の仕事として、朝鮮半島の安定という課題に当面の決着をつけたかったのであろう。とてもではないが、イラク、アフガンなど中東対応に追われている現状では、朝鮮半島に関わりあっているゆとりはない。中台問題も同様だ。

 日米同盟が日本の外交安保政策の基軸であることはいうまでもない。戦後の政策選択として、これ以外に日本が取るべき道はなかった。価値観を共有するアメリカとの同盟関係は日本の国家像をも形成してきた。

 だが、そこにはアメリカの「いいなり」ではなく、日本独自の国益判断からアメリカに注文をつけるという側面が付随していなければならなかった。「対米追随」批判は左派からも右派からも日本政府に突きつけられている。

 「経済大国」としての国際社会に占める位置にかげりが生じ、加えて「政治大国」にもなりえないというのでは、日本の将来は暗澹たるものがある。

 金正日総書記は世界最強のアメリカを交渉相手として引きずり出すことに汲々としてきた。それが成功したのだ。北朝鮮との外交パワーの落差を日本の政府・外交当局者はどれだけ深刻に感じているのか。

 国連安保理常任理事国入りにも失敗し、かと思うと、米下院での「慰安婦非難決議」を阻止することもできなかった。在米大使館はすぎやまこういち氏らが米紙に出した意見広告に対して、決議採択への動きを加速させたと非難した。自らの外交努力のいたらなさを棚にあげて、日本の民間人たちの必死の行動をなじる。なんともはやといわなくてはなるまい。

 日本の国益を踏まえて日米同盟の強化をはかる。これが軸だ。そのためには、日本がなすべき国際貢献、防衛努力も尽くさなくてはならない。インド洋の給油支援をストップさせたり、沖縄普天間基地の移転問題の決着がつかないなどというのは、日本の外交パワーを減殺させる以外のなにものでもない。


 
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