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第29回: 自民党と民主党の「成熟度」の違い
                       
2008.09.09 過去掲載分
 
 福田首相の突然の退陣表明は世間を驚かせたが、政治の流れは速いのであって、一気に自民党総裁選に突入した。

 もはや、福田首相に対して、「政権投げ出し」だの「放り出し」だのといった非難はほとんど見られなくなった。だいたいが、ほとんどのメディアは福田政権に批判的だったのだから、退陣表明をしたらこれを歓迎するのがスジの通った論評といえるのではないか。

 そのあたりに現在のマスメディアの「場当たり主義」が浮かんでくる。1カ月前の人事で麻生太郎氏を自民党幹事長に起用した時点から、事実上の「禅譲路線」は確定していたと見るべきだろう。

 「福田退陣、麻生後継」が現実化するのは、臨時国会を舞台とした与野党攻防の段階、というのが大方の見方であった。それが、福田首相に「出し抜かれた」ものだから、メディアはおもしろくなかったに違いない。

 永田町的にいえば、福田首相の出処進退は「見事」という評価もある。首相の退陣表明というのは、政治の最大の出来事の部類に入る。それは「サプライズ」でなければ効果がない。ズタズタになるまで追い込まれて、さあ、いつ辞めるかと集中攻撃を浴びた結果の退陣表明というのであれば、だれも驚かない。

 福田首相は退陣表明の記者会見で、「私は自分を客観的にみることができる」と公言したが、そこにこの政治家の体質がすべてあらわれている。「好き好んで政治家になったわけじゃない」というのが口癖でもあった。

 福田首相は「政局音痴」ではない。政治の流れ、永田町の人間関係、政局の展開は的確に「読める」のである。ただ、その政局の真っ只中に飛び込んでかき回すということはしない。常に、斜に構えて、シニカルな目で政局を見る。これが福田首相であった。

 そういう福田首相であったからこそ、この電撃的退陣表明が可能だったということだろう。

 自民党はただちに総裁選に突入した。麻生氏をはじめ何人も出馬して、華々しい総裁選を展開する構えだ。これが、長期政権を可能にした自民党の知恵である。

 一方の民主党は小沢一郎代表の無投票3選が決まった。野田佳彦氏らが出馬の可能性を模索したが、結局はつぶされた。

 自民党では、総裁選に勝負を度外視しても出馬するというのは、総裁選を活性化させたとして評価の対象となる。党の活力維持への貢献が認められるのである。

 それが、民主党では、この代表選にもし若手中堅が出馬していたら、小沢新体制になって「日干しにされるのが目に見えている」のが現状だというのだから、これは「党内民主主義」の観点からしても好印象は与えない。

 小沢氏の無投票3選が早々と確定したのは、ここでへたな動きをしたら、小沢氏が何をするか分からないという恐怖心が党内を席巻していたためだ。あの小沢氏のことだから、反旗を翻すのが出たら手勢を引き連れて離党しかねない、といった声すらあった。

 民主党執行部は、これで小沢代表のもと、一丸となって戦う態勢が整ったと豪語するが、本当にそうなのか。

 総裁選と代表選が同時期に重なったものだから、自民党と民主党の対応の違いがいやおうなく浮き彫りになった。これが来るべき衆院総選挙にどう影響するか。そこを注視していきたい。


 
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